中学生20人に、本物の工事現場の課題を預けた橋本組
中学生に絵を描いてもらおう。
この企画は、そこから始まったものではありません。
株式会社橋本組(本社:静岡県焼津市、代表取締役社長/CEO:橋本真典)が、焼津市立焼津中学校の2年生20人に渡したのは、画用紙ではなく、一つの問いでした。
「工事現場をもっと身近で親しみのある場所にするには、どうすればよいか」
建設現場を囲う仮囲いは、通行人の安全を守るために欠かせません。
一方で、高い壁によって、その向こうで何が行われているのかが地域の人から見えにくくなり、工事現場と地域を隔てる境界線にもなります。
そこで橋本組は、この課題を自分たちだけで考えるのではなく、建設業の常識を持たない中学生たちに預けました。
生徒たちは2026年5月から約半年間、工事現場を通る人や、そこで働く人の立場を考えながら、地域にとってどのような現場なら親しみを感じてもらえるのかを考えました。
その答えの一つとして生まれたのが、建設中の焼津体育館を囲う全長17m、34枚のパネルからなるウォールアートです。
「会社の宣伝にしない」が最初の条件
橋本組が生徒たちに提示した条件の一つが、「橋本組の名前を描かないこと」でした。
工事現場の仮囲いは、企業名やロゴを掲げれば広告媒体としても使える空間です。
しかし今回、橋本組が重視したのは、会社の名前を知ってもらうことではありませんでした。
目的は、工事現場と地域との間に新しい接点をつくること。
生徒たちは「企業をどう目立たせるか」ではなく、「地域の人にとって、どんな工事現場なら身近に感じられるか」という視点でデザインを考えました。
建設会社の課題を、中学生が考える
今回の取り組みは、美術作品を制作すること自体を目的としたものではありません。
生徒たちに渡されたのは、実際の建設現場が抱える課題です。
工事現場は、安全のために地域と物理的に区切る必要があります。
では、安全を守りながら、地域との心理的な距離を近づけることはできないか。
この問いに対して、生徒たちは半年間考え続けました。
建設会社側があらかじめ答えを用意して教えるのではなく、地域で暮らす中学生自身が考え、形にする。
橋本組にとっても、普段とは異なる視点から工事現場のあり方を見直す機会となりました。
学校の時間と、工事現場の時間
生徒たちのアイデアを、実際の建設現場で形にすることは簡単ではありませんでした。
今年は雨が多く、工事工程の遅れによって仮囲いの設置時期も変更。
一方、学校には決められた授業時間があります。工事現場の都合だけで授業を動かすことはできません。
そのため、制作では「学校の時間」と「建設現場の時間」という、二つの異なるスケジュールを合わせる必要がありました。
また、仮囲いが当初の予定より高くなったため、高い位置での作業には足場を使用。安全バーを設けるなど、生徒たちが安全に制作できる環境を整えました。
塗料の調達が間に合わない色については、担当教諭が複数の塗料を混ぜて新しい色を作るなど、学校と現場の双方が工夫を重ねました。
残り時間が少なくても、急いで塗らなかった
10月8日の制作最終日。
完成までに残された時間はわずかでした。
それでも生徒たちは、単に完成を急ぐのではなく、輪郭の細かな部分まで丁寧に筆を進めました。
制作中には、通りかかった近隣住民が足を止め、生徒たちの作業を眺める姿も見られました。
現場担当者によると、生徒たちが楽しそうに絵を描き、互いに協力する姿を見て、職人や工事関係者にも笑顔が広がっていたといいます。
生徒からも、作業中に現場の人から「よく頑張ったね。本当にありがとうね。もっと明るくなった」と声をかけられ、うれしかったという感想が寄せられました。
地域と工事現場を隔てるはずだった壁が、制作を通じて人と人が言葉を交わす場所にもなっていました。
「橋本組」の文字はない。でも、橋本組の人はいる
完成した全長17mのウォールアートには、橋本組の社員や橋本CEO、生徒、校長先生が描かれています。
中央には、焼津市の公式マスコットキャラクター「やいちゃん」と、橋本組のキャラクター「ひょっこりちゃん」が並びます。
会社名を大きく描くのではなく、地域で学ぶ人、働く人、暮らす人を一つの風景として描く。
その結果、学校、建設会社、地域をつなぐ17mの作品となりました。
最後は「なぜこの答えになったのか」をプレゼン
10月15日には、生徒たちによるプレゼンテーションを実施しました。
発表したのは、絵の出来栄えだけではありません。
なぜこのデザインにしたのか。
誰に見てもらいたいのか。
この絵によって、工事現場や地域がどうなってほしいのか。
生徒たちは、工事現場を通る人やそこで働く人が笑顔になり、地域全体が明るくなることを願ってデザインしたことや、仲間と協力して作品を完成させた達成感などを発表しました。
制作後のアンケートには、現場を訪れるたびに工事が進んでいく様子を見るのが楽しかったという声も寄せられました。また、「地域貢献について、中学生でもできる事があるんだと気付きがあった」という生徒は、今回の経験を通じて、自分が暮らす地域への思いや関心が強くなったと振り返っています。
橋本組からも橋本CEO、広報担当者、現場職員が審査員として参加しました。
絵を描いて終わるのではなく、課題を考え、形にし、その意図を自分たちの言葉で説明する。
今回の活動は、実際の地域と企業の課題を題材とした探究学習となりました。
建設会社が答えを出すのではなく、地域と一緒に考える
今回の取り組みで、橋本組が目指したのは、工事現場の壁をなくすことではありません。
建設現場では、安全を守るために仮囲いが必要です。
だからこそ、壁そのものをなくすのではなく、壁の役割を増やす。
安全を守るための境界線であると同時に、地域の人が工事現場や、そこで働く人たちに目を向けるきっかけにする。
そして、その方法を建設会社だけで考えるのではなく、地域に暮らす人と一緒に考える。
今回の取り組みは、橋本組にとっても「地域に開かれた建設現場とは何か」を改めて考える機会となりました。
10月15日の発表会で橋本CEOは、生徒たちの学びに協力できたことへの喜びを伝えるとともに、今後もこうした活動に会社として力を貸していきたいとの考えを示しました。
完成したウォールアートは、2027年5月頃まで設置される予定です。
【取り組み概要】
協力校 焼津市立焼津中学校
対象 2年生20人
実施場所 焼津体育館建設工事現場(静岡県焼津市)
活動期間 2026年5月~10月
作品規模 全長17m、パネル34枚
設置予定 2027年5月頃まで
【取材いただきたいポイント】
・なぜ橋本組は、自社の課題を中学生に預けたのか
・生徒たちは「地域から見た工事現場」をどう考えたのか
・なぜ「橋本組の名前を描かない」という条件を設けたのか
・学校の授業時間と実際の工事工程をどう両立したのか
・完成した全長17mのウォールアート
・生徒たちが半年間の探究活動で何を感じ、何を学んだのか
【会社概要】
株式会社橋本組
[代表取締役社長/CEO]橋本 真典
[所在地]静岡県焼津市本町2丁目2番1号
[創業]大正11年12月
[企業サイト]https://www.hashimotogumi.co.jp/
TEL.054-627-3276(代表) FAX. 054-628-8007