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テックドクター、ADHD患者の薬物治療に伴う変化を捉えたウェアラブルデータ研究成果を第31回日本薬剤疫学会学術総会で発表

株式会社テックドクター(代表取締役:湊 和修、本社:東京都中央区、以下、テックドクター)は、2026年10月16日(金)〜18日(日)に開催された「第31回日本薬剤疫学会学術総会」において、注意欠如多動症(以下、ADHD)患者を対象に、市販ウェアラブルデバイスから取得した約1年間の連続生体データを用いて、薬物治療に伴う変化を検証した研究成果をポスター発表しました。

本研究では、ADHDと診断された患者1名を対象に、市販ウェアラブルデバイス「Google Fitbit Inspire3」から約1年間にわたり取得した心拍・睡眠・身体活動量のデータを解析しました。その結果、薬剤の導入・変更に伴い、安静時心拍数や睡眠、睡眠規則性、身体活動量などの指標に変化が確認されました。

これらの結果から、日常生活下で継続的に取得できるウェアラブルデータにより、薬物治療に伴う変化をリアルタイムに把握できる可能性が示されました。

ADHDは、睡眠障害を合併しやすいことが知られています。精神科外来診療において、精神症状や睡眠障害の評価は患者からの主観的な訴えによるものが主であり、薬物療法の導入や変更によるADHD症状や睡眠の変化を継続的・客観的にモニタリングする手段は十分に確立されていません。

そこで本研究では、薬物療法の変更に伴う生体データの変化を、市販ウェアラブルデバイスで捉えられるかを検証しました。

ADHDと診断され、精神科クリニックの外来に通院中の40代女性1名を対象に、Google Fitbit Inspire3を用いて2025年1月1日から12月18日まで352日間、連続生体データを取得しました。また、主治医を通じて薬剤名や投薬期間、患者の主訴を取得しました。

解析期間を、①ベースライン(投薬前)、②アトモキセチン(ATX) 40mg開始後、③アトモキセチン(ATX) 80mgへの増量後、④メチルフェニデート徐放剤(MPH)への変更後 の4期間に区分し、安静時心拍数、睡眠の質や状態、睡眠規則性、身体活動量の4つの指標について変化を解析しました。これらの指標は、先行研究でADHDとの関連が報告されているものや、薬剤の副作用として知られているものをもとに設定しています。

解析の結果、薬剤の導入・変更と並行して、ウェアラブルデバイスから得られる複数のデータに変化が確認されました。

① 安静時心拍数

安静時心拍数は、投薬前の平均73.2bpmから、ATX 40mg開始後に75.2bpm、80mgへの増量後に80.8bpmと段階的に上昇し、MPHへの変更後には79.9bpmへ低下しました。

② 睡眠

投薬前とMPH変更後を比較すると、レム睡眠の割合は19.2%から27.4%、深い睡眠の割合は18.0%から21.9%へ増加し、浅い睡眠の割合は55.8%から48.0%へ減少しました。

また、寝つくまでにかかる時間(入眠潜時)は11.2分から2.4分、夜中に目が覚めていた時間(中途覚醒時間)は31.4分から9.8分、夜中に目が覚めた回数は3.8回から1.3回に減少しました   

③ 睡眠規則性

睡眠と覚醒のリズムがどの程度規則的かを示すSRI(Sleep Regularity Index)は、値が大きいほど規則性が高い指標で、ATX投与期間に上昇し、MPHへの変更後に低下しましたが、期間毎の統計的な有意差は見られませんでした(p ≥ 0.05)。

④ 身体活動量

中高強度の身体活動(MVPA)は、投薬前の1日平均81分からMPH変更後には120分となり、約1.5倍に増加しました。また、総身体活動量(TPA)も経時的に増加しました。

本研究では、薬剤の導入・変更に伴い、入眠潜時や中途覚醒時間・回数の減少をはじめ、複数の生体データに変化が確認されました。これらの変化は薬剤の導入・変更と関連している可能性があり、市販ウェアラブルデバイスを用いて薬物療法効果を継続的・客観的に把握できる可能性が示唆されました。

通常の外来診療では、医師が患者の日常生活における状態を継続的に把握することは難しく、診察時の問診や患者本人の訴えが重要な情報となります。一方、ウェアラブルデバイスを活用することで、診察と診察の間も心拍数や睡眠、身体活動量などの生体データを継続的に取得することができます。

こうした日常生活下の連続生体データは、診察時だけでは捉えにくい患者の状態変化を客観的に把握し、従来の評価を補完する情報となる可能性があります。さらに、薬剤の導入や変更に伴う変化を継続的に捉えることができれば、薬物療法の効果や患者の状態をより多面的に評価し、治療方針の判断を支えることが期待されます。本研究では、市販ウェアラブルデバイスを用いた薬物療法効果のモニタリングの可能性が示されました。

一方、本研究は単一症例の観察報告であり、患者の主観的評価や主治医による評価の情報が限られています。今後は複数症例を対象に、これらの情報を組み合わせた多角的な検証を行う必要があります。また、Fitbitは睡眠・覚醒の判定では高い精度を示す一方、睡眠ステージの推定精度には限界があることから、睡眠ステージに依存しない指標の併用や、機器の測定精度を踏まえた検証も必要です。さらに、併用薬や季節、生活習慣、環境要因などの影響を考慮した解析についても検討していきます。

今後、こうした検証を重ねることで、ウェアラブルデータを薬物療法の客観的評価に活用し、判断精度の向上につなげることが期待されます。

テックドクターは今後も、日常生活下の連続データを活用したデジタルバイオマーカーの研究・開発を進め、医療におけるより適切な意思決定への活用を目指してまいります。

第31回 日本薬剤疫学会学術総会

会期: 2026年10月16日(金)〜18日(日)
開催地: 明治薬科大学(東京都清瀬市野塩2-522-1)
発表形式: 一般演題(ポスター)
発表日時: 2026年10月17日(土)14:45〜15:45
演題名: 市販ウェアラブルデバイスによる注意欠如多動症薬物治療効果の客観的評価:1年間の長期連続データに基づく単一症例報告
学会WEBサイト: https://31jspe.mq-con.jp/

本研究は、研究対象者本人から同意を得た上で、特定非営利活動法人 全国臨床研究協議会 倫理審査委員会の承認(承認番号:485)を受けて実施しました。

テックドクターについて

株式会社テックドクターは「データで調子をよくする時代へ」をビジョンに掲げ、ウェアラブルデバイスをはじめとした日常のセンシングデータから健康に関するインサイトを導く「デジタルバイオマーカー*」の開発と、その社会実装を進めています。医療・製薬・食品関連企業や研究機関と連携し、データに基づくAI医療の実現を目指しています。

代表者: 湊 和修
代表医師: 泉 啓介
本社: 東京都中央区京橋二丁目2番1号 京橋エドグラン4階
設立: 2019年6月21日
事業内容: デジタルバイオマーカー開発プラットフォーム「SelfBase」の開発および運用、デジタル医療ソリューションの提供
Website: https://www.technology-doctor.com/

* デジタルバイオマーカー
デジタルバイオマーカーとは、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどから取得される日常的な生体データをもとに、疾患の有無や病状の変化、治療の効果を連続的かつ客観的に評価する指標です。
従来のバイオマーカーは、医療機関で一時的に測定される「点のデータ」でしたが、デジタルバイオマーカーは日常生活の「線のデータ」を継続的に取得できる点が特徴です。運動、睡眠、心拍などの指標をもとに、病気の早期発見や治療モニタリング、さらには薬剤開発における新たなエンドポイントとしても期待されています。海外では2019年頃から開発が進み、国内でも注目が高まっています。